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雑誌「電波受験界」(電気通信振興会発行)掲載
「私はこうして合格した」より

「きっかけを大切に」



(1陸技)北田佳仁

注記編集:(1陸技)西川敏弘


この文章は、雑誌「電波受験界」1996年1月号に掲載された記事の内容を、筆者北田佳仁先生のご了解をいただき、公開するものです。
当時から考えると、試験制度も大きな変革が行われ、特に旧来「完全記述式」で各科目5問であった試験も、現在ではすべて選択マーク式となり問題数も多くなりました。
また予備試験制度も廃止され「無線工学の基礎」の本試験科目となるなど大きな違いがあります。この歴史的な背景を理解されお読みいただければ幸いです。
しかし、制度が変わろうともその受験者の心はかわらないと思います。どうぞこの文章で貴方の受験のきっかけとしていただけたらと願っております(西川)




1.はじめに

皆様はじめまして,私このたび「第一級陸上無線技術士」の仲間入りをさせていただきました北田佳仁と申します。
 昭和37年生まれの32歳で独身。大学(工学部電気工学科)を卒業後,某コンピュータ会社でシステムエンジニアを経験後,現在は神戸村野工業高等学校情報電子科に教諭として勤務しております。(注記:現在は神戸村野工業高等学校 電子機械科教諭としてご活躍中)
 高校1年のときに電話アマの従免をいただき,高校のハムクラブ(JA3YHM)に在籍し、高校3年のときに個人局(JG3THR)を開局。はや15年が過ぎようとしています。
 拙文で誠に申しわけございませんが,読者の皆様、最後までお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。

2.ハムを知ったきっかけ

 元々、理数系に強い興味を持っていて,小学校・中学校時代から少年向け科学雑誌などをよく読んでいました。
確かその雑誌のアマチュア無線の特集が載っており,そのとき非常に興味を持ったことを覚えています。
 さっそく電話アマの教本を手に入れたのですが,当時の私に理解できたのは直流回路ぐらいで、変調、復調、空中線理論などは全くのお手上げでした。(現在、本当に沢山の小学生ハムの方々がいらっしゃるようで,本当に素晴らしいことだと思います。)
 受験は,高校に先送りすることにしました。希望どおりの市立工業高校(電子科)に入学でき、電子・通信の基礎からみっちりと教えていただき、国家試験に合格し晴れてハムの仲間入りができました。

3.プロ資格を知ったきっかけ

 高校のハムクラブに在籍中、モ−ルス符号を覚え,電信アマに合格。私自身は満足していたのですが.ハムクラブの先輩には,上級ハムや電話通・多重といったいわゆるプロ資格を取得されている方々が大勢いらっしゃいました。
プロ資格の内容等は先輩に教えていたださました。
 その方々にしても,一通や一技は高嶺の花とのこと。チャレンジを勧められたのですが.今の自分ではまだまだ無理と感じ,また、大学進学を希望していたので無線の勉強に専念することができそうになかったので高校時代は,上級のプロ資格は受験しませんでした。(正直なところ,初級ハムで満足していたのかもしれません)

4。1陸技受験のきっかけ

 希望どおり大学に入学できたものの,レポート提出に追われる日々が続き,プロ資格受験のことは全く忘れていました。
 時は過ぎ憮事大学を卒業し社会人生活も5年目となった平成2年のある日,書店で「電波受験界」を見つけました。「高校のハムクラブの先輩がよく読んでいた雑誌だったなぁ。黄色のストライプ上に赤色の誌名,あのころと変わってないなぁ。」と懐しい気持ちになり本誌を開くと.なんと!無線国家試験の内容が大きく変わる(又は,変わっている)そうではありませんか。
例えば,

@ 資格名の変更(一<総>通,一<陸>技)

A 予備試験は択一式

B 工学系科目の減少(工学A,B)

その他,細かいことはもっと沢山あるようです。全く不謹慎なこととは思いますが「資格が手に届きそうな所まで近づいて来てくれた」と正直に感じました。
 これはもう受験するしかないですね。ただ,無線国家試験は約10年のプランクがありましたので、8月に四海通,10月に1アマを受験した後,12月に1陸技予備を受験することにしました。そして予定どおり四海通と一アマをクリア。いよいよ1陸技受験です。

5。予備試験

 準備期間は約4か月,十分な期間が確保できたと思います。ただ,択一式といっても1陸技の予備試験はキビシイですね。
解き方を知らないと(例えば公式を覚えていない等)全く手が付けられない問題が,ニ陸技と比べてかなり多いようです。
 また.平成2年12月期といえば.択一式になってからの日も浅く,受験対策の既出問題が少なかったことが少々不安でした。
現在は,かなり既出問題も増え,受験対策も気分的に楽になっているのではないでしょうか?

私が留意したこと事は,

(1)「電波受験界」や「国試問題解答集」を参考に,少しでも多くの問題に接する.こと。

(2)得意分野(私の場合は,電気電子回路や論理回路)からの出題は絶対に失点しないこと。

(3)単位の次元(ディメンジョン)等をたよりに,矛盾した解答肢を排除すること。

また,単位は公式を暗示している。

以上ぐらいでしょうか。


 6.本試験


 考えてみれば,予備試験受験免除期間が10年もあるということは,本当にありがたいことです。(注:現在は改定され予備試験は無い。ただし「無線工学の基礎」の本試験科目となり、他の科目と同様科目合格期間は3年である)
 私の場合は,じっくりと(のんぴりと)本試験を受けることにしました。
初めての本試験受験は,平成5年1月期でした。
 当初の計画では,平成5年1月期に工学Bと法規の2科目を合格し,次の7月期に残りの工学Aをと・・もくろんでおりました。(結果的には,計画より1期ずれて,平成6年1月期に全科目合格となりました)
 私も,多くの諸先輩と同じく「電波受験界」の受験研究室を大いに活用させていただきました。
本当に「電波受験界」がなければ私の合格はありえなかったといっても過言ではありません。

 次に各科目別に,学習を進めていく上で留意したことを列挙いたします。参考にして頂ければ幸いです。

〔法規〕

(1)集中して読む,そして書く

 

  私は,丸暗記が非常に苦手です(集中力不足?)。したがって,ある意味では工学系科目より苦労しました。
 しかし,克服法は国試問題解答集の解答例をよく読み,そしてノートに書き写すといった最もオーソドックスな方法がベストであると思います。(注意:記述式の時代の話です)
 地味な方法ですが,自分のペ一スをつかむことがでされば,苦痛は薄らいでいきます。
 解答例をよく読むということは当然でしょうが,必ず書く作業の時間を少し多めに確保する方がよいと思います。(読む時間は,通勤途中等その気になれば,工夫次第で,かなり確保でさると思います。)
 書く作業を怠ると,本番の試験で,「問題の解答はうっすらと記憶にあるが,解答を書く筆が進まない」ということになりかねません。

(2)電波法令集に親しむ

 私は,電気通信振興会発行の電波法令集を時々開き,気楽な気分で読むようにしています。
これは,少しでも法規に対する苦手意識を解消するのに有効な方法であったと思います。

(3)覚えやすい問題から覚えていく

 解答が短い問題もあれば,解答が非常に長くなる問題や複雑な数値を覚えなくてはならない問題まで,過去にはいろいろ出題されています。解答が短いから覚えやすいというわけでもないでしょうか。やはり,自分の覚えやすい問題から手を付けていったはうが,精神的なプレッシャーも少ないはず。

(4)ヤマを適切に張る

とはいっても,過去出題の全問をマスターするのは,非常に困難であると思います。
試験である以上(合格点を得るために)ある程度のヤマを張ることは仕方ないと思います。
 「電波受験界」の受験研究室に示されている問題は全問完全にできるようになっている必要があると思います。
ただ,過信は禁物。本来,法規の出題範囲はとてつもなく広いですから。


<工学B>

(1)基礎事項の再確認
 工学Bが苦手とおっこしゃる方がかなりいらっしゃるようですが.私自身は工学Aより好きな科目です。
 まず数学的分野としては,三角関数。
 これをある程度自由に使えないと学習の能率が非常に低下します。また,双曲面、放物面等の性質、パラボラ系アンテナの動作説明にも絶対必要です。  そして、分布定数回路の理論を学習すれば,かなりの問題を克服したことになると思います。

(2)公式のマスター。

工学Aと比べて,公式を使う問題が多いように思います。このことに苦手意識をお持ちの方が多いのではないでしょうか。
 しかし.法規の条文を覚えるよりは,私にとっては楽です。

(3)不完全な解答でも,必ず書いておく

 これは,工学Aにもいえることでしょうが.法規は条文を知らなければ解答できないのに対し,工学系は.解答の導入部分なら書ける(途中式までなら書ける)問題が出てくると思います。

 私が受験した感触では,途中まで合っていれば部分点をつけてくれているような様 子です。

 余裕を持って合格された先輩の方々には無縁の話でしょうが.ポーターラインあたりの得点しか期待できない私にとっては正に命運を左右する話です。

(4)新問対策

 最近は,1問新問が出題されているようです。もちろん新問ですからいわゆるヤマ張りが通用しません。
 しかし,過去に出題された新問(変な書き方になってしまいましたね。要は,その試験期に初めて出題された問題)の難易度は.他の問題に比べて1ランク下がっていると思います。
要するに,既出問題をマスターできれば.あとは少しの応用力で解答できるということです。

 確かに,新問を全く解答しなくても,他の問題の解答が完全ならば.十分に合格ラインに達しているはずですが,出題者は,栄光ある第一級陸上無線技術土は,何らかの解答をしてくれるはず」と意図して出題されているわけです。やはり,その挑戦は受けなければならないでしょう。

<工学A>

基本を振り返ること

前項の工学Bと似たような書き出しになってしまいましたが,少しニュアンスが違います。

 工学Bは、比較的数学が占めるウエイトが大きいような気がしますが,それに対し工学Aは,変諷,復調や測定などの基本の意味を大切にしなければいけないと思います。

 変調とは,端的に言えば,低周波に応じて高周波を変えることであり、復調はその逆です。(初級ハムのレベル)

 その回路の説明に,三角関数の積とかが出てきます。ところが式の変形に追われてしまい、本来解答すべき趣旨がぼやけてしまう傾向があるようです。

 私は,工学Aのほうが工学Bより暗記しなければいけない要素が多いめではないかと思います。楽に覚える方法としては,意味を押さえて,解答の趣旨を理解することが一番ではないでしょうか。

(2)デジタル通信関係

最近はデジタル方式に関する問題が,増えてさている様子です

 当然、基礎のレベルからアナログ方式とは異質のものであり,今後も新問として出題されるであろう分野と思われますので.新問対策という意味からも,学習が必要であると思います。

 以上,本当にのんびりとしたペースで,合格させていただきました。

 ただ,今から思うと,表題にさせていただいた「きっかけ」…それを機会に.(少々の中休みがあったにせよ)あきらめさえしなければ,必ず合格できます。

 最後まで、お付き合いいただいた読者の皆様,本当にありがとうございました。こんな拙文にお付さ合いいただいたのも何かの御縁。皆様の合格の「きっかけ」にしていただければ幸いです。(平成6年10月記す)



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平成12年2月更新

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西川敏弘通信関連ページ1999/1〜(参考集計)